起業時に利用可能な日本政策金融公庫の創業融資の種類と特徴を解説
起業時に資金面で不安を抱えている場合、創業融資の利用も一つの手段です。
日本政策金融公庫は、創業融資を提供している金融機関であり、起業する人や会社の規模、資金の使用目的に応じて複数の融資制度を用意しています。
この記事では、日本政策金融公庫が提供する創業融資の種類と、それぞれの融資制度の特徴について解説します。
日本政策金融公庫について
日本政策金融公庫(通称:日本公庫)は、一般の金融機関の融資を補完し、国民生活の向上を目的とする政策金融機関です。
その支援対象は、小規模事業者や創業したばかりの企業に限らず、子どもの入学資金を必要とする家庭への教育資金融資など、幅広い分野に及びます。
創業融資とは
事業を始める際には、設備や仕入れ、人件費などの開業資金が必要となりますが、創業当初は売上がないため、一般的な融資制度を利用して金融機関から資金を調達するのは難しいことが多いです。
創業融資は、事業を立ち上げたばかりの時期に金融機関等から資金を借りる制度であり、日本政策金融公庫ではいくつかの創業融資制度を用意しています。
日本政策金融公庫の創業融資の種類
日本政策金融公庫の主要な創業融資制度は以下の4種類です。
業種や創業者の年齢、性別などの条件を満たす必要があり、それによって融資を受けられるかが決まりますので、自身の事業内容に合った融資制度を選んでください。
新規開業資金
新規開業資金は、新たに事業を始める方だけでなく、事業開始後おおむね7年以内の方も利用できる融資制度です。
この融資は、新規事業の準備資金や事業開始後の設備資金、運転資金の用途として使用することを目的としています。
返済期間は、資金の使用目的が設備資金か運転資金かによって異なり、融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)です。
生活衛生新企業育成資金
生活衛生新企業育成資金は、生活衛生関係の事業を創業する方、または創業後おおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。
振興計画認定組合の組合員であれば、設備資金および運転資金としてこの融資制度を活用できます。
組合員以外の方については、設備資金として使用する場合に限り、本制度を利用できます。
融資対象者が限定されている一方で、融資限度額は最高7億2,000万円と高額ですので、条件を満たす事業者にとっては有力な選択肢となる制度です。
新創業融資制度
新創業融資制度は、新規に事業を始める方や、事業開始後税務申告を2期終えていない方を対象とした融資制度です。
この制度は、設備資金および運転資金として利用することを目的としており、融資限度額は3,000万円(うち運転資金は1,500万円)です。
一定額の自己資金を保有している条件を満たせば、無担保・無保証人で利用できるため、一般の融資が受けにくい事業者でも申請しやすい設計となっています。
挑戦支援資本強化特別貸付
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)は、特定の融資制度の対象となる事業者に対して行う融資制度です。
対象となる融資制度
- ・新規開業資金
- ・新事業活動促進資金
- ・海外展開・事業再編資金
- ・事業承継・集約・活性化支援資金
- ・企業再建資金
これらの融資制度に定められた設備資金および運転資金として使用することを目的としており、融資限度額は7,200万円が別枠で設けられています。
利率は融資後1年ごとに直近の業績に応じて変動する特徴があり、税引後当期純利益額が0円未満の場合は利率が低水準に抑えられるため、事業者の負担が軽減されます。
さらに、挑戦支援資本強化特別貸付により借りた資金は、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができるのもこの制度の特徴です。
日本政策金融公庫で創業融資を受ける際のポイント
創業融資制度は、適切な事業計画を策定し、その計画を実行する能力が十分にあると認められた事業者を対象としています。
そのため、通常の融資制度と同様に、審査を通過しなければ融資を受けることはできません。
創業計画書の作成は必須
創業計画書は、創業の目的や経営者の略歴、事業内容などを記載する重要な書類であり、日本政策金融公庫の創業融資を受ける際には必ず作成が必要です。
創業計画書の記載項目
- ・創業動機
- ・経営者の略歴
- ・取扱商品・サービス
- ・取引先・取引関係
- ・従業員
- ・借入状況
- ・事業の見通し
- ・自由記載欄
創業計画書に不備や記載内容の不足があると審査に落ちてしまうため、計画書は詳細かつ丁寧に作成することが求められます。
特に、創業動機や経営者の略歴などは審査項目の一つであり、事業の見通しや現在の借入状況についてもしっかりと説明し、返済できる根拠を示さなければなりません。
融資審査は一発勝負
創業計画書などの書類が不完全な状態で申請すると、融資を受けられないだけでなく、今後の事業資金の確保にも支障をきたす恐れがあります。
審査に落ちると、経営状態が劇的に改善しない限り、再申請しても審査に通る可能性は低いです。
そのため、創業融資の申請を行う際は、一発で審査を通過できるよう、万全の準備を整えてから手続きを進めることが重要です。
まとめ
日本政策金融公庫の創業融資は、要件を満たせば低金利で事業資金を借りられるものや、担保・保証人が不要なものなど、多種多様な選択肢があります。
事業者の状況に合った創業融資を活用することが重要です。
ただし、どの融資制度でも審査は行われ、審査に落ちると資金を借りられず、事業計画の変更を余儀なくされることもあります。
そのため、創業融資を受ける際は、専門家に創業計画書をチェックしてもらい、確実に審査が通る状態を整えてから申請することをオススメします。
当税理士事務所では、大阪市の創業融資獲得支援を行っていますので、お気軽にご相談ください。