日本政策金融公庫で融資を受ける際の自己資金の要件
日本政策金融公庫の融資は、低金利で中小企業や個人事業主にも利用しやすいとされています。
しかし、融資を受けるには審査があり、自己資金が不足していると審査に落ちる可能性があります。
本記事では、日本政策金融公庫の融資制度を利用する際に必要となる自己資金の額について解説します。
融資申請時に自己資金が必要な理由
自己資金とは、事業者が保有している預金や資本金などの財産を指し、融資審査の重要な項目の一つです。
融資審査は事業者の返済能力を確認するために行われますが、創業間もない事業者は事業実績がないため、自己資金の重要性が特に高くなります。
事業開始時に自己資金が少ないと、事業計画が甘いと見なされる可能性がありますし、自己資金が枯渇している事業者は返済が滞るリスクが高いと判断されることもあります。
融資は事業資金を調達するために行うものですが、最低限の自己資金を用意しないと融資を受けるのは難しいです。
自己資金の3倍を金融機関から借り入れる現状
日本政策金融公庫の「2022年度新規開業実態調査」によれば、2022年度に開業した事業者の平均資金調達額は1,274万円で、そのうち自己資金は271万円でした。
創業時の資金調達額に占める自己資金の割合は約2割である一方、金融機関からの借入は882万円と、自己資金の3倍以上の事業資金を金融機関から調達しています。
自己資金が全くない状態では融資を受けるのは困難ですが、一定の自己資金があれば融資を受けることは十分に可能です。
2022年度の開業時の資金調達額の内訳
資金調達先 | 金額 |
自己資金 | 217万円 |
配偶者・親・兄弟・親戚 | 49万円 |
友人・知人等 | 52万円 |
金融機関等から借入 | 882万円 |
その他 | 20万円 |
合計 | 1,274万円 |
日本政策金融公庫の融資で必要な自己資金の額
日本政策金融公庫から融資を受ける際に用意するべき自己資金の額は、利用する融資制度によって異なります。
自己資金が少なくても融資を受けることが可能
融資審査は、自己資金だけで可否を決めるわけではありません。
日本政策金融公庫の融資は中小企業や個人事業主を支援する目的もあり、審査基準は比較的緩やかです。
また、利用条件に自己資金の要件がない融資制度もあるため、自己資金が少ない事業者でも融資を受けられます。
自己資金の額が条件となっている融資制度もありますが、日本政策金融公庫には多様な融資制度が存在します。
条件に合った制度を選べば、自己資金の大小にかかわらず、事業資金を調達することが可能です。
自己資金の額が利用条件の融資制度も存在する
日本政策金融公庫の融資制度には、利用条件に自己資金が明記されているものもあります。
創業当初に利用できる「新創業融資制度」は、新規事業者や事業開始後に税務申告を2期終えていない事業者を対象とした融資制度です。
新規事業者や事業開始後に税務申告を1期終えていない事業者は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を有していることが利用条件となっています。
創業資金総額とは、創業時に使用する予定の資金を指し、必要な融資金額が多い事業者ほど自己資金を多く用意しなければなりません。
ただし、新創業融資制度には例外規定があり、現在勤務している企業と同じ業種の事業を開始する場合や、産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を開始する場合などは、自己資金の要件を満たすものとして取り扱われます。
融資金額は自己資金の額に応じて変動する
自己資金の額は融資審査の可否判定だけでなく、融資限度額にも影響します。
「新創業融資制度」では、創業資金総額の10分の1以上の自己資金を用意することが求められています。
そのため、希望する融資金額に応じて必要な自己資金の額も変わります。
例えば、自己資金が50万円の場合、融資金額の限度は450万円、自己資金が100万円の場合は900万円が融資限度額となります。
日本政策金融公庫は、創業資金総額から自己資金を差し引いた額を原則として融資金額とするため、創業資金総額以上の自己資金を持っている場合には、融資を受けられない可能性もあるので注意が必要です。
自己資金に該当する財産の種類と注意点
新たに事業を立ち上げる際、自己資金と見なされるのは、自己名義の預貯金や退職金、保有資産の売却代金などです。
タンス預金や手元現金は自己資金として認められない可能性が高く、贈与により得た預貯金は自己資金に該当しますが、親や親族からの借入金は自己資金の対象外です。
さらに、自己資金を多く見せかける行為(見せ金)は審査で大きなマイナスとなり、融資を受ける目的で他の金融機関から資金を調達する行為は厳禁ですので注意しましょう。
まとめ
自己資金は審査を通過するために用意すべきですが、日本政策金融公庫の融資は、自己資金が少額であっても利用できる制度も存在します。
創業当初に融資を受ける際、審査で自己資金以上に重視されるのは、事業計画書や創業計画書の内容です。
計画書の内容次第で審査の可否が変わることもありますので、融資を受ける際は専門家と協議するなど、準備を整えてから申請手続きを行ってください。
当税理士事務所では、大阪市での創業融資獲得支援を行っていますので、お気軽にご相談ください。