有限会社から株式会社に会社形態を変更する利点と欠点
有限会社は株式会社に会社形態を変更することが可能ですが、一度変更すると、再び有限会社に戻すことはできません。
そのため、有限会社から株式会社への変更を検討する際は、変更のメリットとデメリットを十分に理解し、それを踏まえて移行するかどうかを決定してください。
現存する有限会社の扱いについて
有限会社は平成18年に有限会社法が廃止されたため、新たに設立することはできなくなりました。
しかし、会社法施行前に設立された有限会社は「特例有限会社」として存続が認められており、現在でも多くの有限会社が事業を行っています。
特例有限会社は基本的に有限会社の性質をそのまま踏襲しており、株式会社にはない利点もあるため、有限会社の形態を維持している企業も多いです。
一方、企業の経営状態や方針によっては、株式会社に形態を変更する必要がある場合もあります。
有限会社のまま事業を継続するメリット
有限会社は、株式会社に課されている義務が一部免除されているため、事務作業量や費用面を考えると、有限会社のまま事業を行う方がメリットがある企業も存在します。
決算公告の義務がない
株式会社には決算公告義務がありますが、有限会社にはありません。
公告とは、官報などに会社の情報を公開する制度で、株式会社は定時株主総会後に遅滞なく貸借対照表を公告する義務があります。
小規模な会社にとって公告の事務作業は負担となり、情報を公にすることで多少の影響を受けることもあります。
有限会社には決算公告義務がないため、この作業を行わずに事業を継続できます。
役員の任期に制約がない
株式会社には取締役や監査役の任期が定められており、任期満了後には役員の改選手続きが必要です。
同族会社などでは同じ人が役員を続けることが多いですが、役員構成に変更がなくても役員変更登記を行う必要があります。
一方、有限会社には任期がないため、任期満了に伴う役員改選や役員変更登記が不要です。
このため、株式会社に比べて維持管理コストを抑えることができます。
有限会社の看板で創業年数が分かる
事業を行う上で、取引相手からの信用を得ることが重要です。
取引相手が信用する要素の一つに創業年数がありますが、有限会社は新たに設立できなくなってから16年が経過しているため、「有限会社」と名乗る企業は、それだけで16年以上事業を行っていることが分かります。
企業は立ち上げてから数年で倒産することが多く、10年以上存続する確率は低いとされています。16年以上の創業年数は大きな強みとなります。
有限会社から株式会社に移行するメリット
現存する有限会社は特例的に認められた会社形態であるため、株式会社の機能を活用して事業を行う場合、株式会社への形態変更が必要です。
企業の組織再編が容易になる
他社と合併する場合、有限会社を存続会社とすることはできないため、企業の組織再編を行う場合には株式会社への移行が必須です。
特例有限会社の株式は譲渡制限株式に該当するため、有限会社のまま上場することはできません。
譲渡制限規定の変更も有限会社には認められていないため、株式会社に移行してから規定を変更することになります。
対外的なイメージアップ効果
会社法施行前の有限会社は設立条件が株式会社よりも少なかった一方で、社員数50人以下などの条件がありました。
特例有限会社になってから社員数の上限は撤廃されましたが、現在も有限会社は事業規模が小さい企業の形態とのイメージが残っています。
若い世代には有限会社の存在があまり認知されておらず、就職先として敬遠される可能性があります。
特例有限会社は有限会社を名乗ることが義務付けられているため、有限会社を隠して活動することはできません。
したがって、従業員を募集して会社を大きくする場合には、株式会社として活動することも選択肢となります。
有限会社から株式会社に移行する際の手続きの流れ
有限会社から株式会社への変更には、定款の変更と、有限会社の解散および株式会社の設立登記手続きが必要です。
定款の変更は、商号(社名)変更のために行います。
株主総会で定款変更の決議を行った後、法務局で特例有限会社の解散と株式会社設立手続きを同時に行います。
特例有限会社の解散登記は、実際に会社が消滅するわけではなく、権利などは株式会社に引き継がれます。
まとめ
既存の規模で会社を経営するのであれば、有限会社として活動しても問題ありませんし、公告義務が免除されるなどの利点もあります。
しかし、会社の規模を拡大する場合、資金調達や企業合併などの理由から、株式会社への変更を検討すべきケースも出てきます。
判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談してください。
当税理士事務所では、大阪市の会社設立や創業支援を行っていますので、お気軽にご相談ください。