税務調査の対象期間と実施時期。対策する際に注意すべきポイント
国税庁の資料によると、法人税の税務調査は3年間で約12%の割合で実施されています。したがって、毎年調査を受ける可能性は低いです。
しかし、調査対象となると複数年分の申告書がまとめて調査されるため、本記事では調査対象期間と調査の実施時期について詳しく説明します。
税務調査の実施期間は対象者によって異なる
税務調査の期間は法律で定められていますが、調査担当者がその期間内の申告書すべてを調査するわけではありません。
一方で、脱税行為を行っている悪質な納税者に対しては、通常よりも調査期間が長く設定されています。
法律上は5年前まで遡って調査することが可能
法律によれば、税務調査は過去5年分まで遡って実施することが認められています。
税務調査が確定申告書を提出した直後に行われるというイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし、法人や個人事業主など毎年確定申告書を提出する事業者に対する調査は、基本的に複数年分の申告内容が対象となることが多いです。
そのため、申告書を提出してからしばらくして調査が行われることもありますし、時効が成立する直前にまとめて調査されることも珍しくありません。
一般的な税務調査の対象期間は3年
法律で認められている調査期間は5年ですが、実際の税務調査では3年分の申告書だけを調べることが多いです。
調査期間が3年である理由としては、かつて課税庁による増額更正の期間が原則として3年だったことや、多くの納税者に調査を行うために1件当たりの調査時間を短縮していることなどがあります。
ただし、無申告者や申告内容に明らかな誤りがある事業者については、法律で認められた調査対象期間内のすべての申告書を調べるので注意が必要です。
税務調査は申告誤りを指摘するだけでなく、申告内容の確認や疑義の調査のためにも実施されます。申告誤りがなければ調査が是認(問題なし)で終了することもあるため、税務調査を受けたからといって必ずしも追徴課税を支払うとは限りません。
悪質な納税者の調査対象期間は7年
調査期間の例外として、仮装隠ぺいなどの脱税行為を行った事業者に対しては、調査対象期間を最大で7年とすることが認められています。
計算ミスや法律の解釈誤り、単純な申告漏れの場合は、7年分の調査を受けることはありません。
しかし、売上除外や架空経費の計上、意図的な無申告などの悪質な行為が認められた場合には、税務署は7年前の申告分まで遡って調査を行います。
税務調査に対する誤解と注意点
資料は5年以上遡って調べることも
税務調査の対象期間は申告書の提出期限から5年です。
時効が成立すれば税務署は申告誤りについて指摘できませんが、申告書を作成する際に基となった資料などは、5年以上遡って調べることもあります。
例えば、金融機関は預貯金の入出金などの取引情報を7年間保存する義務があるため、7年前の入出金の状況を調べることも珍しくありません。調査担当者は取引相手に聴き取りを行う「反面調査」を実施しますが、反面調査先の企業などが保管している資料も、必要であれば年分に関係なく調べます。
調査期間を過ぎた部分の申告誤りについては、調査担当者が事実を把握していても指摘されることはありません。
しかし、過去に不正を行った事実がある場合、事業を続けている限り税務署にマークされることになるため、不正を行うリスクは非常に高いです。
調査対象期間が延びることがある
実地調査を行う際、調査担当者は事前に調査対象の税目や課税期間について説明します。
しかし、実地調査を進める中で、把握された非違と同様の誤りが想定していた調査対象期間よりも前に発生している可能性がある場合、事前に説明した税目以外も調査されることがあります。
例えば、当初は3年分の申告書を調査する予定だったとしても、不正などが判明した場合には、調査期間を5年や7年に延ばすこともあるため、注意が必要です。
1年の中で法人税調査が実施されやすい時期
1年の中で法人税の税務調査が実施される可能性が高いのは、決算期から半月ほど経過した前後の時期です。
税務署も決算月や法人税の申告書を提出する時期が忙しいことを理解しているため、その時期を狙って調査を実施することは少ないです。
法人税調査は複数年分をまとめて調査するため、設立した直後に税務調査が行われる可能性は低いです。
しかし、個人事業主が法人化した場合、事業自体は個人事業主時代から継続しているため、法人設立から間もないタイミングで調査が実施される可能性もあります。
設立して3年が経過すれば、一般的な調査期間である3年分の申告書が税務署に提出されたことになるため、税務調査を受けることも考慮しなければなりません。
まとめ
税務調査は例外を除き、法律上5年間は実施することが認められています。そのため、この期間内の領収書や請求書などは破棄せず保管してください。
帳簿書類は7年の保存が義務付けられているものもありますが、保存義務がない書類でも、経費計上した支出を証明する領収書などは保管することをお勧めします。
税務調査を回避する最善の方法は、申告書を正しく作成することです。専門家に依頼し、節税と適正申告を両立させてください。
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