贈与税の税務調査期間は6年?相続税調査との連動理由
贈与税は他の税目に比べて調査期間が長く、相続税の補完税として位置づけられているため、相続税と連動して税務調査が行われることが多いです。
この記事では、贈与税の税務調査の特徴と実施状況について詳しく解説します。
贈与税に対する税務調査の実施状況
国税庁の資料によれば、贈与税の実地調査件数は、新型コロナウイルス感染症が流行する前の平成30事務年度では3,732件、令和2事務年度では1,867件となっています。
贈与税の実地調査で特に特徴的なのは、無申告件数と非違件数の割合が高い点です。所得税や法人税、相続税なども無申告者に対する実地調査を行いますが、主に申告書を提出している納税者を対象としています。
これに対して、贈与税の税務調査は主に無申告の納税者を対象としており、令和2事務年度の非違件数のうち82.2%が無申告者でした。また、実地調査による非違事項の指摘割合は95%(平成30事務年度)と非常に高いため、贈与税の税務調査を受けた場合、高い確率で追徴課税を支払うことになります。
贈与税の税務調査の3つの特徴
調査の対象期間は6年
所得税など税務署が扱う税金の調査期間は原則5年ですが、贈与税の調査期間は1年長い6年です。贈与税の調査期間が長い理由として、無申告の納税者の割合が高いことや、贈与の実態を把握するのに時間がかかることが挙げられます。なお、悪質な納税者に対する調査期間は他の税目と同様に7年です。
相続税と同時調査することが多い
贈与税は、生前に財産を無償で受け取った場合に課される税金であり、贈与者の多くは受贈者の親族です。
相続税対策の一環として生前に贈与を行うケースも多く、年間110万円の基礎控除内であれば贈与税はかかりません。しかし、110万円を超える贈与には申告義務があり、相続開始前3年以内の贈与は相続財産に加算されます。
そのため、相続税の税務調査を行う際に、贈与税の税務調査も併せて実施されることが多いです。
海外事案を重点課題としている
国税庁は税金の種類に関わらず、海外関連事案の調査に力を注いでおり、贈与税も例外ではありません。
国税庁が毎年公表する調査状況等の資料では、海外資産関連事案に関する財産別非違件数や地域別の非違件数も公表されています。国際的な租税回避が世界的に問題視されているため、海外資産の贈与も隠すことはできません。
贈与税の税務調査の流れ
贈与税は受贈者が申告する税金ですが、受贈者自身が申告手続きの必要性を理解していないことが多く、無申告の割合が高いです。税務署は自主申告を促すため、電話や手紙で申告漏れを指摘することがあります。
「お尋ね文書」は税務調査ではないため、文書が届いた後に申告書を提出すれば自主申告扱いとなります。自主的な期限後申告は、ペナルティである加算税の税率が税務調査で指摘された場合よりも10%低くなります。
税務署が税務調査を実施する場合、単純な申告漏れであれば実地調査の必要性は低いため、税務署に呼び出して申告漏れを指摘する「実地調査以外の調査」によって行うことが多いです。ただし、実地調査以外の調査も税務調査の一つであり、申告誤りを指摘された際には、実地調査と同様の加算税・延滞税を支払うことになります。
税務署からの連絡や呼び出しを無視すると、調査担当者が自宅に訪れる実地調査が行われます。実地調査は調査日時を調整して実施するのが原則ですが、納税者が調査に応じない場合には無予告で実施されることもあるため、税務署から連絡があった際には応対してください。
相続税調査で贈与自体が否認されることもある
贈与税の税務調査は、贈与税の申告誤り・申告漏れを指摘するために実施されますが、相続税の調査と同時に行われる場合、贈与がなかったものとして名義預金として課税されることがあります。贈与は民法で定められた法律行為であり、贈与者と受贈者が同意していれば口約束で贈与することも可能です。しかし、口約束だけでは贈与が行われたことを証明するのが難しく、税務署は贈与自体を否認することがあります。
贈与自体を否認されないためには、贈与契約書の作成や贈与税の申告書を提出するなど、税務署に物的証拠を提示できるよう対策を講じる必要があります。
まとめ
不動産の贈与を受けた場合などは、申告漏れとなった直後に贈与税の調査が行われることが多いですが、現金贈与については相続税調査と一緒に贈与税調査が行われることが多いです。贈与税の時効は6年であり、時効を迎えればそれ以前の贈与に対して贈与税は課されません。ただし、相続税と贈与税を同時に調査する場合、名義預金として認定されることも考えられるため、贈与した証拠は残すとともに、基礎控除額を超える贈与には忘れずに贈与税の申告手続きを行ってください。
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