合同会社の利点と欠点。設立手続きと株式会社との違い

合同会社は、株式会社にはない独自の特徴や利点がある一方で、設立する際には注意すべき点もあります。

本記事では、合同会社の概要、株式会社との違い、設立手続きの流れについて解説します。

合同会社の概要

合同会社とは、持分会社（合同会社・合名会社・合資会社）の一つであり、2006年の会社法改正で新設された会社形態です。
出資者（社員）は経営者となり、社員1名から会社を設立することができます。

出資者は有限責任者となり、出資額を超える債務を負わないのが、合資会社や合名会社とは異なる点です。

株式会社に比べて合同会社の企業数は少ないですが、「Apple Japan」や「アマゾンジャパン」などの大手外資系企業は合同会社として活動しています。

合同会社と株式会社の違い

合同会社と株式会社の大きな違いは、所有と経営が一体であるか、分離しているかです。

株式会社は、出資者である株主と経営者が別々である「所有と経営の分離」の体制が特徴です。
株式を保有している人が経営に携わらなくても問題ありませんし、1株も保有していない人が役員として活動することもできます。

一方、合同会社は出資者である社員と経営者が同一人物であることが特徴です。
出資者がそのまま経営に携わるため、事業方針を迅速に決められる利点があります。

合同会社を設立する際の流れ

合同会社を設立する場合、次の流れに沿って手続きを進めます。

合同会社の設立手続きの流れ

1.社名等の基本事項の決定
2.定款の作成
3.出資
4.登記申請
5.行政機関等への届出

基本的な手続きは、株式会社の設立手続きと同じです。

定款作成時に収入印紙を貼る必要がありますが、電子定款であれば収入印紙は不要となり、費用を抑えることが可能です。

また、株式会社と異なり、定款は公証人の認証を受ける必要がありません。

登記申請が完了したら、税務署や市区町村などに届出を行います。

法人の銀行口座を開設する際には、登記簿謄本（履歴事項全部証明書）の提出が求められることがありますので、登記手続きの際に複数枚取得しておくと手続きをスムーズに進められます。

合同会社を設立するメリット

設立費用が安い

合同会社は株式会社よりも設立費用が安いため、法人成りの選択肢として合同会社を選ぶ方が増えています。
株式会社の登録免許税は最低15万円ですが、合同会社は最低6万円と安くなっています。

また、株式会社を設立する際に必須の定款認証手数料も、合同会社では不要です。
さらに、合同会社には決算公告義務がないため、官報掲載費もかかりません。

法人化による恩恵はそのまま受けられる

合同会社も法人形態の一つであるため、事業で得た利益に対する税金は法人税として支払います。所得税の最高税率が45％であるのに対し、法人税の最高税率は23.2％と低いため、個人事業主が法人成りすることで節税できるケースもあります。

素早い意思決定が可能

株式会社は株主総会で株主の意見を聞く必要があり、株式の保有割合によっては株主の主張を受け入れることが求められます。
一方、合同会社は出資者と経営者が同一人物であるため、意思決定がスピーディーに行えます。

合同会社を設立するデメリット

資金調達の方法が限られる

合同会社は株式を発行できないため、株式会社よりも資金調達の方法が限られています。

株式会社は所有と経営が分離しているため、投資家に資金だけを出資してもらうことが可能です。

創業当初の資金調達方法としても活用でき、株式を増資して新たに資金を確保したり、会社が保有する株式を売却して資金を得たりすることも可能です。そのため、資金調達の選択肢は株式会社の方が豊富です。

株式会社よりも知名度が低い

合同会社は2006年から新設された会社形態であり、株式会社に比べて知名度が低いです。
知名度は社会的信用力にも影響し、事業形態の違いによって取引の成立・不成立が変わることも考えられます。
また、従業員を募集する際に、株式会社以外の形態は敬遠される可能性もあります。

合同会社を設立するのに向いている人・業種とは

合同会社は設立コストを抑えられるため、個人事業主が法人成りする際に選びやすい形態です。
株式会社では株主が発言権を持ち、方針転換を余儀なくされることもありますが、スピーディーな経営判断が求められる業界では合同会社として活動する方が良い場合もあります。

合同会社は株式を活用した資金調達はできませんが、金融機関からの融資は受けられます。
高額な事業資金を必要としない事業であれば、資金調達手段が少ないことは大きなマイナスにはなりません。

特定の相手と取引を行う場合や、飲食店など一般消費者を対象とする業種については、会社形態よりもブランド力が重要となるため、合同会社のメリットを活かして事業展開するのも一つの選択肢です。

まとめ

合同会社は世間的な知名度では株式会社に劣りますが、外資系の会社などは合同会社で運営しています。
資金調達にあまり困らない事業であれば、合同会社のデメリットは少ないです。
合同会社を設立後、株式会社に変更することも可能ですので、会社を設立する際は専門家に相談し、最適な会社形態を選択してください。

当税理士事務所では、大阪市の会社設立や創業支援を行っていますので、お気軽にご相談ください。